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help リーダーに追加 RSS 小説 「それぞれの夕暮れ」 26

<<   作成日時 : 2008/07/16 22:29   >>

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 一応梅雨は続いているということだったが、その土曜日は夏本番を思わせる晴れた暑い朝であった。ファクシミリの一件があってから、省吾と鈴美は電話で連絡を取り、鈴美は中央高速を走る高速バスに乗って、H市近辺の省吾の住む街へ来ることになった。省吾が朝自宅を出るときに母親が行先を尋ねたので、省吾は同じ会社の違う事務所の人で最近友達になった鈴美と逢う、と説明をした。そして、もし後藤嬢から電話があり、省吾の行先を尋ねられても「わからない」と答えてくれ、と頼んだ。
 高架になっている中央高速のバス停下の道路に車を駐車し、省吾は鈴美を待っていた。やがて高速のバス停のドアが開き、鈴美が階段を降りて来るのが見えた。
「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」
「とんでもない、こちらこそ遠いところまで出て来てもらって」
特に行く場所も決まっていない二人、というより、鈴美が今日東京に出て来た理由もわからないままだったが、省吾にはそれはどうでもよいことだった。先週長い時間一緒にいたにもかかわらず後藤嬢の問題を口に出せなかったので、今日はよいチャンスだと思っていた。
「とりあえず、せっかく近くまで来てもらったんだから、俺の家でも見ていく?」
「うん、是非」
鈴美はそう言われるのを待っていたかのように頷いた。省吾の住む街には地方の人でも知っているような施設としては、トラックやダンプカー専門の有名な自動車会社や、園内をマイクロバスで周遊できる大きな動物園があり、そんな話題でしばらく走りながら、車はやがて省吾の家の前にさしかかった。
「ここだよ」
省吾は運転しながら自分の家を指差し、そのまま通り過ぎたが、鈴美は斜め後ろを振り返りながら、食い入るように見ていた。
 夏の正午近くの強い日差しの中で、省吾は湘南の海に行こうと思い立った。

 十八才の時、早くも運転免許を取得したその次の日に、初めて遠出したのがこのH市から厚木を抜けて茅ヶ崎の海に行くコースであった。その後交際した何人かの女性との最初のデートのときには、このコースをドライブに連れて行ったものだった。この日も年中渋滞している国道を避け、平塚の辺りまで走り慣れた裏道を通りながら、海沿いを走る国道に突き当たる丁字路の交差点に出た。

(続く)
※ この小説はフィクションであり、実在する人物、団体名等とは一切関係ありません。
 転載・盗用を禁じます。

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